ストレスを受け止める「副腎」という小さな臓器の疲れが、
さまざまな不調を引き起こしていると語る篠原先生。
「副腎疲労」を引き起こす原因は主に①ストレス②血糖調節③炎症④不規則な生活の4つ。
今回は食生活に関連する「血糖調節」と「炎症」について伺います。
日々の食事の何気ない習慣が、実は副腎を疲れさせ、
メンタル不調の原因になっていることもあるようです。
ご自身も「副腎疲労」による体調不良やメンタル不調を経験した
「東京原宿クリニック」の篠原岳先生に、食生活の大切さについてお話を伺いました。
午前中だるくて、夜に元気になる人は
生活リズムの立て直しを
「人間という動物はやはり、日が落ちたら早く寝て、朝日が昇ったら起きるというリズムで体ができているんです」と話す篠原先生。毎日仕事や家事が忙しく、不規則な生活が当たり前の現代社会。しかしそういった生活リズムが、副腎にも大きな負担をかけています。
「だいたい副腎疲労の方は、夜のほうが元気。午前中に調子が上がらないから、しわ寄せが後ろ後ろにきて、夜になってようやく活動的になる。そうすると寝るのが深夜になり、また朝起きられない……そういう悪循環になっています。このスパイラルを抜けるのは、忙しい社会人の方々にはかなり難しいと思いますが、それでもそこを断ち切っていかないと、不調を改善するきっかけがつかめないと思うんです」
可能な限り、日付が変わる前に床に入ること。眠くても早起きして、朝日を浴びること。そうすることで、夜に眠くなると篠原先生は話します。
「朝日を浴びると、『幸せホルモン』として知られるセロトニンが分泌され、脳の興奮を抑え、心身をリラックスさせる効果があります。日が沈むとこのセロトニンを材料に、自然な眠りに誘う『睡眠ホルモン』メラトニンが分泌されるんです。朝日を浴びると、夜眠りやすくなる。だから夜なかなか眠れない人は、数日は眠くて辛くても、朝の光をしっかり浴びるサイクルに戻してあげることが大切なんです」
夜しっかり眠るためには、「日中にアドレナリンをできるだけ出さないようにするのも大切」と篠原先生。アドレナリンが出ると、神経が高ぶって脳がリラックスできず、睡眠障害の原因に。低血糖になるとアドレナリンが出て、副腎をクタクタにさせてしまう話は「心の不調 診察室①」でも解説しましたが、夜はできるだけリラックスを心掛けたいもの。そして「スマホとの付き合い方も考えて」と篠原先生。
「スマホの光は体内時計を狂わせ、メラトニンの分泌が低下します。僕は夜にお風呂を入ったあとは、絶対にスマホを見ないと決めています。スマホ自体を寝室に持ち込まない、朝日を浴びて目を覚ます。それだけでぐっと体調がよくなるかもしれませんよ」
そしてよく眠るためには、お風呂に入ることも侮れない効果があるのだとか。シャワーでは交感神経の緊張がなかなく解けないので、中途覚醒する原因に。入浴はリラックスの副交感神経を優位にするための、大切な要素なのです。
適度な運動習慣が
副腎疲労、メンタル回復のカギ!
食生活に生活リズム。それに加えて篠原先生が「副腎を回復させるのに絶対に必要」と念を押すのが「適度な運動」です。「現代社会は座り仕事が多いので、どうしても運動不足になりがち。『ずーっと調子悪いな』『食べ物や睡眠も気を付けているのに』という方が体を動かすようになると、副腎疲労もメンタル不調も、劇的に回復することが多いんです」
だからといって、激しい運動は禁物。どうしようもなく疲れている人がさらに負担となるような運動をすれば、かえって悪化しています。「体が気持ちよく感じる運動」「翌日に疲れが残らない程度の運動量」が目安です。副腎疲労の人は、1日20~30分程度の散歩がおすすめだとか。
篠原先生が患者さんと接していて、圧倒的に炎症が起こっていると感じるのが「腸」。便秘をしている方が多く、食べたらすぐにお腹が張る。炎症を起こしているから張るし、張るから炎症を起こす。「病院に行っても治らない」と悩む方がとても多いといいます。
「少しずつ体力が回復してきたら、少しずつ始めて欲しいのが筋トレです。筋肉の中にはグリコーゲンという糖が蓄えられるので、低血糖が防げるんです。筋肉がない人はすぐに糖不足になって、低血糖になってしまう。“運動しないことが逆に副腎に疲労を溜める”。意識しにくいかもしれませんが、体を動かせばスムーズな睡眠にもつながります」
副腎疲労を回復させる、さまざまな方法を伺いました。まとめてみると、昔から言われている「十分な休息」「栄養バランスの取れた食事」「適度な運動」といった、どれもオーソドックスなものばかり。でも逆に、この王道の健康法を実践するのが難しくなっているのが現代社会です。
「不調はネガティブなものとして捉えがちですが、実は自分の心身を見直すきっかけにもなりますよね。『このままじゃいけないよ』という体からのサイン。あまりに辛いときは医療の力に頼り、そののちに少しずつでいいのでご自分で生活を改善していく。『あの時が私のターニングポイントだった』と、のちのちにポジティブに捉えられるようになったらいいですよね。そのためにも副腎という臓器のことを、もう少し気にかけてもらえるとうれしいです」
Have a try !
まずは自分が「気持ちいい」と思えることから、少しずつ始めてみましょう。