「お金の不安」への処方箋

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経済愛好家・肉乃小路ニクヨさん vol.2
お金は自分を幸せにするための「道具」


「もし財産を失って貧しくなっても、それなりに楽しく暮らせる自信があります」
と軽やかに語る、経済愛好家の肉乃小路ニクヨさん。
ゆるぎないその強さはどこからくるのでしょうか。
ニクヨさんが長年お金と真摯に向き合う中で培ってきた「上手なお金の使い方」を聞きました。

Photo : Daisuke Ishizaka
Text : Yoko Jinza
Edit : Ayumi Sakai

「どうしたら幸せになれるか」
を考えてお金を使う

「お金はとてもパワフルなものだけど、あくまでも『道具』。だから『どう使うか』がとても大切なんです。その時一番大切にしたいのは、『どうしたら自分が幸せになれるか』ということ」

心が満たされることや自分にとって価値ある体験にお金を使うと、人生が豊かになり、結果的に心の安定にもつながります。何となくお金を使っている方や、贅沢していないのにお金がないという方は、お財布を開く前に「この買い物は私の心を満たしてくれる?」「私を元気にしてくれる?」「自分を高められる?」など、自分に問いかけてみるといいかもしれません。

自分に興味を持つことが
お金の不安解消につながる

「幸せになるお金の使い方をするためには、自分を好きであることが前提だと思うんです」とニクヨさん。確かに自分を好きでないと、どうすれば心が満たされるのか、わかりづらいもの。

「私は鏡で自分を見て『かわいい♡』とか『今日もがんばろ』って自然に思うタイプなので、そこに苦労はないのですが、自分を好きになることに照れや抵抗がある方もいますよね。それでもせめて自分に興味を持って、何をすると喜びを感じたり心が動くのかを知って欲しい。だってどう頑張っても自分からは離れられないんですから。ならば自分に興味を持って大切にするしかないですよね」

自分をないがしろにしたままでは幸福感を得られず、お金の不安が解消されにくいのも当然かもしれません。改めて自分の興味関心に目を向けて、「パワースポットめぐりをする」「アートのワークショップに参加する」など、心が動くお金の使い方をリストアップしてみると何か発見がありそうです。

「そうやって自分とお金を大切にしている人のところには、自然とお金が集まってきますよ」。そんな不思議なお金の習性を、ニクヨさんはそっと教えてくれました。

幸せは『なる』ものではなく
『感じる』もの

幸せになるお金の使い方を身につけるために、ニクヨさんからもう1つ提案が。 「ぜひ、経験を増やすことを意識してみて。いろんな経験をすることで幸せを感じやすくなりますから」。

人生経験が積み重なると、過去の記憶や共感力が自然と呼び起こされて、心が豊かに耕されていきます。そうして少しずつ幸せを感じるセンサーが磨かれて……。

「ささやかな贅沢やちょっとしたことでハッピーになれると、お金がある時もない時も人生を楽しめるんですよね。私は、幸せって『なる』ではなく『感じる』ものだと思うんです。幸せのかたちは人それぞれだし、何をもって幸せと定義するかはとても難しい。でも、幸せは感じることで初めて実感できる。お金持ちになるとか贅沢なモノを買えるとか、経済的に特別豊かではなくても、幸せを感じやすい体質になればそれが勝ちという気がするんです」

壁にぶつかり続け、貧しかった20代に
古代ローマから生き方を学んだ

ニクヨさんは元外資系金融エリートという華やかなキャリアを持ちながらも、日々の生活とリンクしたお金の知識や心の在り方を大切にし、幅広い層から支持を集めています。お金の価値観を形作るターニングポイントとなったのは、20代で貧しさを経験したことでした。

「新卒で証券会社に就職したものの、入社直前で病気になり、わずか3カ月で退職して。お金がなかったから、東京・新宿区にある4畳一間のトイレ・シャワー共同の物件に住み、29歳までバイトや派遣社員をして暮らしました」

そこで「お金をどう切り詰めながら、20代の大事な時間を過ごすか」ということに真剣に向き合ったといいます。

「昔から読書が好きで、本からたくさんのことを学びました。この頃出会った『ローマ人の物語』(塩野七生著/新潮社)は、不遇の時代を伴走してくれたお守りのような一冊。貧しくても幸せになれるかもしれないと前を向けたのは、この本のおかげなんですよ」

『ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサル ルビコン以前』[電子版]

「古代ローマの人たちは質実剛健。建造物も道具も、装飾は控えめだけど機能がとても優れていて。インフラ(交通や教育など社会を支えるための設備や施設)整備に力を注ぎ、それを戦略的に活用して繁栄しました。そこから『私も華美な装飾より自分の中のインフラ的なものを充実させていこう』と思ったんです」

お風呂はスポーツジムで済ませ、読みたい本は図書館で借り、空調の効いた快適な空間で読書や仕事の勉強。喫茶店やファミレスでも食事をしながら学び、幅広い知識を身につけ内面を深めていきました。

「東京のインフラをフル活用して毎日を充実させ、住まいは家賃を抑えて寝るだけの場所でいい!って割り切れたのも『ローマ人の物語』を読んだから。そうした日々の中で、自分は何にお金をかけると幸せなのかを徹底的に学びました。大企業で順調にキャリアを積む同級生たちを見て『悔しいーー』って泣いた夜もあったけど、あの経験があったから、お金のある・なしに振り回されない自分になれたって思います」

モノより「経験や勉強」にお金を使い、
生きていく力をアップデートする

そうして自分の生き方やが幸せのかたち、お金の使い方と向き合ううちに、自然と見栄や物欲が薄れていったそうです。

「29歳で外資系の保険会社に転職して収入が増えても、貧しい頃に我慢していたブランド物をまた買いたいという気にならなくて。興味がなくなってしまったみたい。モノは必要な機能があれば満足です。今つけている腕時計だって一万円しないスマートウォッチだけど、これで睡眠時間も計れるから機能的には十分。これからもモノより経験や勉強にお金を使って、自分をアップデートしていきたい」

幅広い知識やそれを活用する力、深い内省を経て得た価値観、収入を得るためのスキルと努力を続ける力――。ニクヨさんのように、生きる力となるような「自分の中のインフラ的なもの」を一つ一つ増やすことも、お金の不安を解消するための処方箋といえそうです。

続くvol.3では、お金の不安とも関係する「メンタルの健康と整え方」についてお届けします。

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大切なお金を意識的に使って、
幸せをより感じやすい自分になることが、お金の不安を減らすことにつながります。

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