ミニマリストが選んだ「物」とストーリー

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広瀬裕子の「わたしが整う日用品」 file.07
「眠りのための、あたらしい時計」


ミニマルで上質な暮らしが人気を集めるエッセイストの広瀬裕子さん。
驚くほど物を持たない広瀬さんが、手放さずに使い続けている物、新たに手に入れた物とは?
「本当に好きなものを少しだけ、大切に使う」という広瀬さんの審美眼に叶った
日用品の物語を綴ってもらいます。

Text&photo : Yuko Hirose
Edit : Ayumi Sakai

「なくてもいいけれど、あると便利」が変えてくれたこと

時計がなくてもiPhoneがあれば時間の確認はできます。PCをつければ、何時かもわかります。「なくても大丈夫」と思い、家のなかから時計が消え10年の時間がすぎました。

最近、時計を使うようになりました。ここにきて時計が必要になったのには理由があります。夜中に目がさめた際、時間を確認するためです。

iPhoneを手にすれば時間はわかります。が、一連の動作と強いひかりで眠れなくなることが時にあります。

目がさめてしまう主な理由は、飼いねこ。夜中にねこが走りまわり、音や鳴き声で目がさめてしまうのです。とくに先の夏は、日中暑かったからか、とにかく、夜になるとねこは断然、調子を上げます。そのことで、睡眠不足がつづき「眠り」を見直すことにしました。

元々寝つきがよく、眠れないことは、ほとんどありません。どちらかというと寝すぎが心配なくらい。ねこが理由で、眠りを見直すとは想像もしていませんでした。

でも、いいきっかけです。睡眠は大切ですから。

ふつう「眠りを見直す」というと、寝具を思いうかべますが、わたしは「まず時計」にしました。実は気になっていたのです。枕元にiPhoneを置いて眠ることに──。

選んだ時計は、コンパクトなデジタル時計。

これなら目がさめたとき、数字だけ見れば時間がすぐわかります。暗闇で手をのばしやすいサイズです。何より、液晶の数字がまぶしくないため、すぐにまた眠りにつけます。

デザインもシンプル。白と黒があり、白を選びました。ブラウン製。

ブラウンの時計は、かつて、いくつも持っていました。一軒家で暮らしていた時は、仕事部屋、キッチン、寝室、バスルームとそれぞれ置いていたこともあります。

また、アラームをかけていたのに鳴らなかった朝があり(寝坊しました)、寝室に2つ置いていたことも。いまは、コンパクトな部屋で、かつ、iPhoneもあるので、ひとつで十分です。

デジタル式の時計を使うのは、はじめてですが、時間がわかりやすくていいですね。暗闇で目を凝らさなくても何時か把握できます。

後から気づいたのですが、電池式なので、停電が起きても使えます。家にひとつあるといいかもしれません。

夜中に目がさめてしまうと、翌日のことを考え「早く眠らないと」と思う反面、深い夜の楽しみもあります。映画を観る、チョコレートに手をのばす、朝に近づく空を眺める。それはそれで、いいものです。

「あると便利だけれど、なくても大丈夫」。世界にはそう思うものもありますが、10年ぶりにやってきた時計は「なくてもいいけれど、あると便利」なものでした。そうそう。涼しくなり、ねこは、ますます調子づいています。


< 今日の「ご褒美」 >
中秋節に食べられる月餅は、中国の伝統行事のお菓子です。
この月餅はガレット・デ・ロワの生地に餡を合わせたオリジナルの月餅です。
(銀座ウエスト)

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