現代人が抱える悩みや日々わいてくる心のもやもやに、
多くの人とその人生に向き合い、心を癒してきたあの人がアドバイス。
今回の回答者は、コミュニケーションの専門家・大野萌子さんです。
頼まれごとやお誘いを断るのが苦手です。「断ったら悪いかな」「相手にどう思われるだろう」「査定にも影響する?」と気になり、引き受けたらキャパオーバーになるとわかっていてもうまく断れません。気乗りしないお誘いも、公私ともにOKしてしまいがち。その結果、後悔したり気が重くなったり。どうしたら相手の気分を害さず、自分も罪悪感を持たずに断れますか。
必要なときに断ることは
お互いのためであり、誠意の表れ
「断ること=拒絶」と考えていませんか? そのようにとらえると、依頼やお誘いを断ることで「相手を不快にさせるのではないか」「怒らせてしまうのではないか」という思い込みが生じることがあります。
実は、断ることも「コミュニケーション」の一部です。すべてにYESと答えることはできないもの。だから、自分の許容範囲を超えたことに対して「できない」と伝えるのは、拒絶ではなく誠意といえます。むしろ、答えをあいまいにしたり、安易に引き受けて十分に応えられなかったときのほうが、相手に迷惑をかけたり、関係を悪化させることになりがち。「状況に応じて断ることは、相手のためでもあり、自分のためでもある」ということを心に留めておきましょう。
代案を提示すると
気がラクになる
断るときは、自分の状況や理由をきちんと伝えることが大切です。ただ「ごめんなさい、できません」と謝るより、「今はこの案件を担当しているため、時間が取れません」と具体的に説明したほうが、相手の理解を得やすくなります。
断ることが後ろめたいなら、プラスアルファのひと言を添えてみましょう。「今回は申し訳ありません。でも、また声をかけてくださいね」と伝えると、相手も受けとめやすくなります。また、代案を提示する方法もおすすめです。「今週は難しいですが、来週ならできます」と期間を提案したり、「〇〇ならお手伝いできます」と内容を伝えてもいいでしょう。
OKする基準を決めて
悩む時間をなくす
職場の飲み会やイベント、プライベートのお誘いでは、気乗りしない場合もありますね。それをストレートに言うのはマナー違反ですが、「気乗りしない」も立派な断る理由だと思います。
ただ、仕事やおつき合いもあるので、全部を断るのは難しいのが現実。そんなときは、「自分のOK基準」を設けておくと、いちいち悩まずにすみます。「個人的な飲み会はパスするけれど、忘年会など課のメンバーが参加する会には参加しよう」「家に1時間以内で帰れる場所ならOK」といった具合です。
自分のOK基準を相手に伝えられる場合は、今後のためにそれを伝えておくといいですね。例えばキャンプに誘われたら、「アウトドアは苦手なんだ。インドアで遊ぶときは誘ってね」と返します。これで、またキャンプに誘われて悩むという状況を回避できるはず。
OK基準や理由を説明しづらいときは、あれこれ言い訳せずに「今回は遠慮しておきます」とシンプルに伝えるのがベスト。嘘の理由で取り繕うと、SNS投稿などで嘘がばれたりして余計こじらせることもありえます。
最初は難しく感じるかもしれませんが、必要なときに断ることはお互いのためであり、誠実な対応であることを心に留めて、できることからトライしてみてくださいね。