揺らいだ日も、頑張った日も。
MIND
揺らぐ心をフラットに「お悩み相談室」 #19
2026.05.15
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「人間関係など、気づくとマイナス思考になっています」答える人:精神科医・星野概念さん

「人間関係など、気づくとマイナス思考になっています」答える人:精神科医・星野概念さん

現代人が抱える悩みや日々わいてくる心のもやもやに、
多くの人とその人生に向き合い、心を癒してきたあの人がアドバイス。
今回の回答者は、病院に勤務するかたわら
執筆や音楽活動も行う精神科医・星野概念さんです。

Text : Yoko Jinza
Edit : Ayumi Sakai

今回の悩み
物事を悪い方にとらえがちです。考えすぎなのかもしれませんが、例えばメールの返事が来ないと「相手を怒らせてしまったのではないか」「嫌われているのではないか」と落ち込みます。同じ出来事があっても、夫は「単に相手は忙しいだけ」と気にしていない様子。「なぜもっとポジティブに考えられないのか」と夫に言われます。ネガティブに考えてしまうのは、私の自己肯定感が低いせいでしょうか? それとも生まれ持った性格? もっとポジティブに考えられる人になりたいです。

自分の内面より
現実的な視点から考える

僕自身メッセージを送った後、「まだ既読がつかないかな」と何度もスマートフォンを確認してしまうほうなので、あなたの気持ちがよく理解できます。

人は、自分のことはいくらでも責められるし、いくらでも低く見積もれます。なぜなら誰も止める人がいないから。メールの返信が来ないとか、誘いを断られたとかでくよくよすると、つい「自分の性格」や「自己肯定感の低さ」に原因を求めがちです。

でも自分だけを責めるのではなく、「相性がイマイチなのかも」とか「相手にも問題があるかも」と考えてもいいと、僕は思います。それから人間関係の悩みは、もう少し現実的な視点で考えることが大事かなと思います。そのときのポイントは次の2つ。

①相手との関係性
相手の言動をネガティブに受け取ってしまうときは、2人の関係性に何か不安要素があることが多いです。相手が知り合って間もない人なら、まだ分からないことが多くて、不安になるのは自然なこと。気分にムラがある相手であれば、振り回されることもあるでしょうし、心配になるのも無理はありません。

同じ状況でもあなたの夫があまり気にしていないのは、「相手は忙しいだけ」と自然に受け取れる関係性だからかもしれませんね。

②自分に余裕があるかどうか
心身に余裕があるときは、「彼女は返信がゆっくりなタイプだから」と自分をなだめたり、好きなことをして不安を紛らわしたりできます。そうこうしているうちに相手から連絡が来て、「取り越し苦労だった」と感じることも少なくありません。

だけど余裕がないと、普段気にならないことも心配になったりします。不安な状況を持ちこたえるためには、揺れても大丈夫な〝地盤″のような余裕が必要です。地盤が弱いとちょっとした不安要素で心がグラグラしてしまう──そんなイメージです。

「相手との関係性」と「自分に余裕があるかどうか」。人間関係でマイナス思考になりかけたら、この2つを振り返ってみてください。

自己肯定感を高める努力より
「自己否定」をいかに減らせるか

「ポジティブ思考になりたい」という点については、自己肯定感を高めようという情報は世の中にたくさんあります。でも僕はあまり気にしなくていいと思っています。むしろ「自己否定をいかに減らせるか」が大事ではないかと考えています。

人は悩みや苦しみを抱えながら生きているので、1日に何度も自分を否定してしまうものです。そこで自己否定を減らすための方法を2つ提案します。

①自己否定をするべき場面か、検証する
本来必要のない場面で過度に自分を責めているとしたら、それは自分に厳しすぎます。先ほどの「相手との関係性」と「自分に余裕があるかどうか」を振り返ったりして、今の状況は本当に自分のせいか、確認してみてください。

②いたわりの言葉を自分にかける
ただ、心身の余裕がなくなると、①のように考えること自体が難しくなって、「バカ バカ バカ バカ……」と自己否定の嵐に飲み込まれることも。そんなときは「ありがとう」「よくやってるよ」と、いたわりの言葉を自分自身にかけてみましょう。

心の中でつぶやいてもいいのですが、できれば声に出すことをおすすめします。そうすると自分の耳からもいたわりの言葉が入ってくるので、心により深く届きやすくなります。

「そんなのバカバカしい」「照れくさくて言えない」と思うとしたら、それは自分をないがしろにしているサイン。自己否定の癖は多くの人がもっています。だからこそ反対側に折り目をつけるように意識的に、「型」から入らないと自己否定は減らせない気がしています。

ぜひ「自分にねぎらいの言葉をかける実験をしてみよう」という気持ちで試してみてください。心が少し緩んでラクになるかもしれませんよ。

profile:

星野概念

精神科医など。1978年生まれ。
医師として臨床に携わる一方、ミュージシャンや執筆など多方面で表現活動を行う。
対話を大事にし、「無理をしない」「自分を追い込みすぎない」
視点から現代人の生きづらさに寄り添う姿勢が支持されている。
著書に『こころをそのまま感じられたら』(講談社)、
『ないようである、かもしれない~発酵ラブな精神科医の妄言』(ミシマ社)など。

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