揺らぐ心をフラットに
「お悩み相談室」 #01

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「今のまま年を重ねていいのか、迷ってしまいます」
答える人:禅僧・宇野全智さん


現代人が抱える悩みや日々わいてくる心のもやもやに、
多くの人とその人生に向き合い、心を癒してきたあの人がアドバイス。
今回の回答者は、禅宗の僧侶・宇野全智さんです。

Text : Yoko Jinza
Edit : Ayumi Sakai
今回の悩み

人生の折り返し地点にさしかかり、「これからどう生きよう」「今の暮らしを淡々と続けていいのか」と迷っています。これまでの人生が取るにたらないものに思えて、落ち込むことも。どうしたら迷いが晴れるでしょうか。

「何者かになりたい」という欲求は
尽きることがない

「自分は何者かにならなければならない」という固定観念や「何かを達成したい」という思いにとらわれ、心を苦しめてはいないでしょうか。
現代に生きる私たちは、「人間は向上心や理想に突き動かされて成長し、立派になっていく」と考えています。しかし、禅の視点で見ると、その生き方は何者かになることを未来に先送りする人生になり、常に満たされないというあやうさをはらんでいます。
なぜなら、「何者かになりたい」「向上したい」という欲求は、どこまでも止まないものだから。会社で昇進したい、起業したい、もっと収入を増やしたいといった目標も、それが達成されると喜びもつかの間、「では次はどうする? 何を目指す?」となりがちです。

心の在り方や行いを見つめ直し、
”今この瞬間”を丁寧に生きる

禅では、「何者かにいつなるのか」を問うとき、「この瞬間、仏のような素敵な人でいられたか」を考えます。例えば、「今、『やさしい人だな』と言われる自分でいるだろうか」とか、鏡を見たときに「今日の自分はいい顔をしているな」と思えるかにフォーカスします。未来ではなく、今この瞬間の、心の在り方や行いの中に「なりたい自分」を置くのです。
これには、禅における時間のとらえ方が関係しています。禅では、時間を過去・現在・未来ではなく、「今の連続」と考えます。過去は記憶の中にしかなくて、すでに存在しないものであるし、未来は実に不確かなもの。明日は必ず来るとは限らず、今日死んでしまうかもしれない。そんなふうに儚い人生の中で、人は生きている。だからこそ、5年10年先を見て何者かになろうとするのではなく、今この瞬間に「なりたい自分」を実現することに集中する。
仕事の場面においては、同僚や後輩との接し方、声のかけ方、書類の渡し方、気配りの仕方の中で「なりたい自分」を実現し、丁寧に生きることを心がければいいのではないでしょうか。

仏らしく生きれらる日が
1日でもあれば、それでいい

「自分の人生は取るに足らないもの」……本当にそうでしょうか。そのような思いが頭をもたげても、「あなたと一緒にいられてうれしい」「あなたが大好き」「あなたに出会えてよかった」と、家族や友人、仕事仲間などが思ってくれた瞬間があるならば、そのことを大切にして生きていくことが大事なのだと思います。
『修証義(しゅしょうぎ)』という有名なお経の中に、「100年生きて、つまらない日常に追われた人生だったとしても、仏らしく生きれらる日が1日でもあれば、それでいい」と説く一節があります。「頑張っていたな」「あの瞬間の私は素敵だったな」と、キラキラした存在として心に残る自分をもっと大事にしましょう。

「人としてどう在りたいか」を
考えてみる

目標や向上心を持つにしても、その質を高めることが大事だと思います。偉くなりたいとか、社会的に評価されたいといったものではなく、「自分はどういう人間で在りたいか」に重きを置く。人として憧れる人や尊敬する人の生き方を改めて見つめ直し、そこに近づいていくのもいいでしょう。
自分が階段を登ることよりも、心の在り方や行いを磨くことに目を向けてみる。そうすれば心も落ち着き、周りからの評価や結果も自然についてくるでしょう。
あなたは何者になりたいですか?ーーー。それを丁寧に考えてみてください。

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