手放して、身軽に生きる

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エッセイスト・広瀬裕子さん vol.1
コンパクトで余白がある。理想は、心が回復できる家


“LESS IS MORE”。豊かさとは何か?ーー。
そんな哲学や問いかけを私たちに投げかけてくるかのような、
エッセイスト広瀬裕子さんのシンプルな暮らし。
50代後半、香川から東京への引っ越しを機に、
今まで縁のなかった東京・東側の都心に居を構えました。
そこでの暮らしを覗かせていただきながら、
ものを手放すことでもたらされた心の動きについて、お話を伺います。

Photo : Kohei Yamamoto
Text : Kyoko Kato
Edit : Ayumi Sakai

120㎡→45㎡。実験するような気持ちで、ものを手放す

家の中に一歩入ると、心地よい静謐さを感じ、風がすーっと抜けていくようなイメージ。それが現在、広瀬さんが東京の都心でひとり暮らすご自宅です。とてもコンパクトなのに、余白がもたらすゆとりがあり、訪れる人の心までもほっとさせる空気感が漂っています。

1年半ほど前、約6年暮らした高松から引っ越しをし、住まいを1/3までダウンサイズした広瀬さん。以前住んでいた広い家でもシンプルに暮らしていたこともあり、家具はすべて新居に持ち込めたのだそう。
「ソファもベッドも持ってきました。狭いながらも収まりもよかったので、そのまましばらく暮らしていたのでですが、ちょっと体調を崩したとき、これから年を重ねていったら、この状態では柔軟な対応ができないと感じたんです」

家具がびっしり詰まった空間で、家具をよけながらのどこか不自由な暮らし。ないほうがいいかもしれないと感じ、まずはソファを手放し、ダイニングテーブルは小さいサイズに買い替え。ベッド、棚2台も結局手放しました。60歳を目前にしての決断です。母、父と順に亡くし、実家じまいを経験したことも、ものを減らす後押しになったと振り返ります。

家具を手放したあと、1か月ほどテーブルがないという状態も体験。「新しいテーブルの納期との兼ね合いだったのですが、意外になんとかなるものだなと思いました。テーブルは必要ですが、布団生活も、ソファがない暮らしも、今のところ問題なく、快適。ソファがあればいいなと思うときもありますし、もっと年を重ねたらベッドがないのは辛いかもしれない。気持ちは変わる可能性はあるけれど、今は、ある意味”実験”。とにかくやってみて、何が心地いいのかを体感している最中です」

”持っていること”のほうが、負担が大きい

家具を手放したら、手狭だと思っていた同じ部屋なのに、「広い! 気持ちいい!」と感じたのだそう。そして、物量に比例して心も軽くなったといいます。手放すことに多大なストレスを感じる人も多いですが、「持っていることの負担と、手放すことの負担。比べると、私は前者のほうが大きい。『余白が少ない』『ものを管理しなきゃ』と思うほうがストレスを感じてしまうんです」。

自分にとってどっちが快適か、自分はどんな状態が気持ちいいのか、はたまた自分は結局何がしたいのかーー。

自分の心に問うて、自分の心に正直に。「離婚も経て、だれかと生活をすり合わせる必要もなくなりました。今は、自分基準で選ぶことに重きをおいています」。その結果が、広瀬さんにとっての”ノイズだと感じるものがない”、余白のある整った空間なのです。

本当に好きなものを少しだけ。大切に使う

昔から、ものが少ないすっきりとした空間が好きだったということもあり、買うところから厳選するのは、広瀬さんの長年の習慣。心から気に入ったものを選んでおくと、次に使ってくれる人も見つけやすく、ものの手放しやすさにもつながっているよう。「捨てる」という言葉とは無縁で、必ず次に使ってくれる人を探してつないでいます。

また、椅子から爪切りまで、メンテナンスをしたり、職人さんに直してもらったりしながら、長く使っているものも多いのだそう。広瀬さん宅のどこを見ても淀みを感じないのは、「”今”必要な、本当に好きなものを少しだけ、大切に持っている」からなのです。

心が回復しやすいよう、住まいを整えておく

自分という核を持ち、凛と生きているように見える広瀬さんですが、もちろん落ち込むことも、生きづらさを感じることもあるといいます。だからこそ、メンタルが下がったままにならないように、ものの持ち方をつど見直し、家を整えることを大切に思っています。「気持ちを上げるというより、『下がった気持ちを戻せる』ことを意識しています。だから、いかに自分にとって居心地をよくするかに力を入れるんでしょうね。そうやって自分を守っているんだと思います」。

いちばん長い時間を過ごす場所である自宅。その場所から自分にとってのノイズ、つまり、嫌だな、不快だなと思うものをしなやかに取り除いていく。そして、余白を大切にしてゆとりを持つ。そうやって広瀬さんは、まるでリトリート施設のような、心も身体も回復する住まいをつくりあげているのです。


< バッグの中も身軽ですか? >
財布を持つのもやめました
いちばんよく使うバッグは、コンパクトなポシェット。
中には、なんと!財布さえ入っていません。
クレジットカード1枚を直接バッグに入れ、
あとはスマートフォン、めがね、紙幣を入れた紙封筒だけ。
「現金を使う機会も本当に少なくなりました。
財布を持たないと決めると荷物は本当に減りますよ」。
ポイントカードはスマホに入るものだけ、小さなウェットティッシュとエコバッグをポケットに。
”自分基準。必要なものだけ。ノイズはなし”。バッグの中身まで徹底されていました。

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