ミニマルで上質な暮らしが人気を集めるエッセイストの広瀬裕子さん。
驚くほど物を持たない広瀬さんが、手放さずに使い続けている物、新たに手に入れた物とは?
「本当に好きなものを少しだけ、大切に使う」という広瀬さんの審美眼に叶った
日用品の物語を綴ってもらいます。
「いつものもの」から「すきなもの」へ
「必要だから」という理由で手にするものが、日常には数多くあります。選ぶ基準としては、使用目的、価格、使い方(使い勝手)などでしょうか。時に、そこに、肌ざわりや香りが加わることもあれば、デザイン、パッケージなどが含まれることもあります。
感じのいいトイレットペーパーを見つけました。クラフト紙のパッケージ、控えめな色・デザイン。それでいて「トイレットペーパーとわかる」ものです。メジャーなメーカーのものなので品質も信頼できます。このトイレットペーパーと出合ってから、わたしは、これ以外、手にしなくなりました。
トイレットペーパーは、生活のなかでの必需品です。パッケージのすき・きらいで「買う」「買わない」ができないものです。それもあり、それまでは、デザインなど目をつぶり「いつものもの」を購入していました。そして、家に持ち帰ると、すぐ、透明のビニール袋から取り出し、棚にいれ、あとは使う時だけ出すようにしていました。
でも、このトイレットペーパーは、パッケージのまま棚に置いています。目に入ってもいいデザイン。いえ、むしろ、見たくなるデザイン。そう、思っています。
見た目や形、デザインは、作り手の意識が可視化されたものだと常々思っています。包みやパッケージは、はずしてしまえば破棄されるものがほとんどです。洗剤などもそうですが「置いてある風景がいいかどうか」は後回しにされるものです。
でも、暮らしは、そういったひとつひとつのものが集まり出来上がっていきます。そのひとつひとつが、うつくしかったり、調和がとれていたり、作り手の思いがあるものであれば、結果、日常の風景は、いいものになっていくと思っています。
クラフト紙でできたパッケージのなかには、トイレットペーパーが4コはいっています。ひとり暮らしで大量ストックが苦手なので、このサイズも丁度いい。
何より──。トイレットペーパーを買うのがたのしい。そんな気持ちになるトイレットペーパーは、はじめてです。
ベランダの山茶花が開きはじめます。
ちいさかった山茶花も
10年の時が流れ立派になりました。
「今年もたくさんの花をつけてくれてありがとう」。
そう思いながら、
毎朝、毎日、花をたのしみにしています。



