「こころの本屋」選・今月の一冊 #01

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『感じるオープンダイアローグ』
森川すいめい/講談社


もやもやしたり、イライラしたり、くよくよしたときに、
そこに何が関わっているかを客観視できたなら、心は少し軽くなるかもしれません。
自分を知る、人を知る、時代を知る、社会を知る──。
理解の手助けになるような本を、こころの本屋の本棚から紹介します。

Text : Rie Ishikawa
Edit : Ayumi Sakai

対話による癒しのプロセスが
著者の体験から綴られる

人の悩みに接したとき、どうにかしたくて私はついつい、あれこれ提案しそうになります。共感のつもりで似たような経験を話す、前向きな言葉で切り替えようとする、解決のヒントになればと情報を引っ張り出してくる……。しかし、相手の表情はすっきりするどころか、「そうですね」と力のないつくり笑顔を見せています。ああ、悩んでいる人に同調の気遣いをさせてしまいました。人の話を聞くってなんて難しいのでしょう。自分の未熟さとつくづく向き合っていたころに知ったのが、フィンランド発祥の「オープンダイアローグ」です。
オープンダイアローグとは、精神科の病院ではじまった「対話を開く」取り組みのこと。対話によって精神を病む人の8割が回復したという驚きのデータや、1980年代から今日まで続いている普遍性、職場や家庭でも応用されているという身近なところにも興味を持ちました。効果的な「対話の方法」が知りたくて、思わず手にしたのがこの新書です。
ところが、オープンダイアローグには7つの原則が指針としてあるものの、マニュアルのたぐいは存在しないのだそうです。ゆえに本書では、著者の森川すいめいさんが、フィンランドでトレーニングを受けた3年間のプロセスにじっくりページを割いています。自分の傷に向き合う心の痛みや、自身の変化をつまびらかにすることで、対話による回復とはどういうことなのかを伝えようとする試みです。
読み終えるころには、私の中に「自分は本当に相手を尊重しているかどうか」の視点が据えられました。森川さんが書いていた「これまでに一人として自分が対話者だと言い切る人には会ったことがありません」との言葉を噛みしめながら、未熟なままの自分を開いています。

『感じるオープンダイアローグ』森川すいめい/講談社
1 回 60 分の対話で、困難を抱える人とその周囲の関係性を助けていくオープンダイアローグを
「知識」ではなく「感覚」で捉えることを目指した一冊。
さまざまな事例で対話の風景を示しながら、「答えに飛びつかない」などの大原則、
「その人のいないところで、その人の話をしない」という場の設定、
「対等の関係性の中で行う」などのマインドを丁寧に伝えている。

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