ミニマルで上質な暮らしが人気を集めるエッセイストの広瀬裕子さん。
驚くほど物を持たない広瀬さんが、手放さずに使い続けている物、新たに手に入れた物とは?
「本当に好きなものを少しだけ、大切に使う」という広瀬さんの審美眼に叶った
日用品の物語を綴ってもらいます。

主張しないデザインに惹かれて。
ストックがなくなると横断歩道を渡り向かいのコンビニエンスストアまで足を運びます。そこで手にするのが、黒い箱のティッシュ。いまのところティッシュは、こちら一択です。
「こういうものを使いたい」という思いと「実際に売っている物」のあいだを行き来しながら、物の選択は、はじまります。なかでも生活用品においては「使いたい」と「現実」の乖離に「うーん」と手が止まることも度々です。洗剤、薬、食品。挙げていくとキリがありません。
ティッシュもそんな物のひとつでした──。そう、それは、もう過去のことだからです。数年前から、セブン-イレブンオリジナルのティッシュを使っています。
基本的にティッシュボックスを目につくところに出しておくことはしません。でも、もし、出して使うことになったとしても、これならいいと思っています。
では「どこに置いているのか?」というと、引き出しのなかに入れ、使うたびに引き出しを開けています。置いている場所は、キッチンと洗面所の2カ所。
引き出しに入れるのなら「何でもいいのでは?」と思うかもしれません。でも、引き出しは「開けた時」の気持ちが大事です。いつもは見えていなくても、それが、ストック場所だったとしても「いい」と思える物を選ぶようにしています。
何もデザインされていないようなデザイン。それが可能なのは、プライベートブランドだからなのかもしれません。
世界の多くの物は「目立つように」と作られています。そんななか反対へ舵を切った物。でも、それが、逆に目につきます。潔い空気に惹かれます。どこでも、すぐ、入手できる点もいいですね。日用品にはそういう利便性も必要です。
見た目と価格と使用感。どこに重きを置くかは、人によりちがいます。自分がいいと思う物を選び日々、使う。たとえ、それが、ティッシュひとつだとしても──。

旬のくだものをたっぷり使ったお菓子(近江屋洋菓子店)を楽しみに
季節毎にお店へ向かいます。