現代人が抱える悩みや日々わいてくる心のもやもやに、
多くの人とその人生に向き合い、心を癒してきたあの人がアドバイス。
今回の回答者は、病院に勤務するかたわら
執筆や音楽活動も行う精神科医・星野概念さんです。
40代半ばの女性です。忙しく精神的にもプレッシャーのかかる職場で働きながら、近居で一人暮らしをする母親のSOSにも対応したりと、気が休まるときがありません。母は年老いてきて一人では生活を回せなくなっており、「私が頑張らなきゃ」と思うのですが、最近は気持ちが晴れない日が続き、ふいに涙が出てきたりします。「心療内科など病院に行ったほうがいい?」と思う一方で、「こんなことで病院にかかるなんて……」とためらう自分もいます。周りの人にも相談しにくくて、どうしたら気が楽になるでしょうか。
人は自分に対して
いくらでも厳しくなれる
多忙で精神的負担も大きい仕事をしながら、高齢の母を日常的にサポートしている毎日では、心身ともに余裕がなくなってしまいますね。特に40~50代は、仕事や子育て、親のことなど、複数の責任が重なりやすい年代でもあります。
人は、自分のことはどこまでもしごけるものです。他人と向き合うときには多少なりとも気を使いますし、人の目や良心、社会や会社のルールなどがブレーキになります。でも自分に対してはそうした監査役がいませんから、いくらでも厳しくできてしまうのです。
その結果、自分のことは後回しにしがちに。朝早くから会社に出かけ、仕事が終われば親の対応をして、へとへとになって帰宅し、食事は出来合いのものや冷凍食品ですませる……そんな毎日が続いているのではないでしょうか。
自分のために何かをする
時間を意識してつくる
受診することが助けになるのであれば、それも一つの選択です。ただその前に「自分のために」というテーマで、何か小さなことを試してみてほしいと思います。いつもよりゆっくり食事をする、好きな動画を見る、推し活をするなど、1日20~30分でいいので「〇〇したい」という気持ちに従う時間をつくってみてください。
真面目で優しい人ほど、「会社のために」「家族のために」「パートナーのために」と、誰かのためにたくさん動いて、いつの間にか消耗してしまうもの。だからこそ「自分のために」を意識的に取り入れていきましょう。
自分にとって「安全な人」に
話すと、何かが動くかも
もう一つ、自分にとって「安全な人」に話してみるのもいいと思います。ここで言う「安全な人」とは、「自分が安心する人」というより、決めつけたり、受け取りにくいアドバイスを安易にしてこない人のことです。ただしどんな相手を「安全な人」と思うかは、人それぞれ。中には「率直なアドバイスをバシバシくれる人の方が、そこから考えやすくていい」という人もいるでしょう。
「こんな状況なんだけど、どう思う?」と信頼できる誰かに話すことで、何かに気づくかもしれない。また、その人に会いに行く途中で本屋に立ち寄り、思いがけず良い本に出合うかもしれない。そんなふうに、自分一人で悩んで煮詰まっている状態から、何かが動くかもしれません。
美容師さんを探す感覚で
ドクターを探そう
受診するかどうか迷ったときの一つの目安として、食欲がない、眠れないなど、「今までの自分と明らかに違う状態」が続くときには、受診することをおすすめします。心療内科でも精神科でもかまいません。そうした変化が特にないなら、自分が「受診したい」と思ったときでいいと思います。
自分に合う病院かどうかは、実際にかかってみないと分からないことが多いです。「ちょっと違うかも」「合わないな」と感じたら、無理をせず通院をやめていいし、病院や医師を変えることに躊躇する必要もありません。病院や医師にも相性があるので、美容師さんを探すような感覚で探してみてください。
僕の回答を読んで、今どんな気持ちでしょうか。受診したいと感じますか。それとももう少し考えてみたいでしょうか。ご自身の心の声を聞いてみてください。



