ミニマルで上質な暮らしが人気を集めるエッセイストの広瀬裕子さん。
驚くほど物を持たない広瀬さんが、手放さずに使い続けている物、新たに手に入れた物とは?
「本当に好きなものを少しだけ、大切に使う」という広瀬さんの審美眼に叶った
日用品を公開する新連載、スタートします。

「白いカップ=理想の人」として使いつづける
ロイヤルコペンハーゲンのカップを毎日、使っています。ロイヤルコペンハーゲンと言えば、ブルーの模様が特徴的ですが、わたしはホワイトシリーズを愛用しています。
白いカップを選んでいるのは、どのような場面に於いても清々しさを感じるからに他ありません。物としてのうつくしさは当然ですが、それに併せ他の物を受け入れる懐の深さもあります。
ちがう色の食器、模様入りの物などと組み合わせても互いの魅力を保ちつつ調和する。テーブルの色も素材も選ばない。それが、わたしが白いカップを使いつづける理由です。
物に対し日ごろ感じるのは「物」はあくまでも「物」ですが、それを使う「ひと」を常に感じるということです。言葉を発せずとも、物を通し、選んだ人の意識や使っている時間が見てとれます。
そう考えているからでしょう。わたしは、白いカップに対し「理想の人」を見ているところがあります。──過度に主張することなく、風景に調和し、時が過ぎても白独特の品がある──。人として「そうありたい」という思いを白いカップに投影しているのです。
そう。わたしは、いつの日か「白いカップのような人」になりたい、と思っているのです。

7月。暑くなる季節になると「涼やか」な様子のお菓子が店頭にならびます。
井戸の渦を表した観世水という名のお菓子(とらや)です。