「ペンギン ブックストア」選・今月の一冊 #19

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『わたしのマトカ』
片桐はいり・著/幻冬舎文庫


お客様から「元気がないときに、おすすめの本はないですか?」と
よく訊かれるというペンギン ブックストア店主の立石さん。
そんな時、立石さんは「元気が出る本」ではなく
「元気がなくても楽しめる本」を紹介しているのだそう。
気持ちに寄り添ってくれて、硬くなった心をほぐしてくれる。
そんな一冊を、毎月セレクトして独自の視点で紹介する人気連載。

Text : Minobu Tateishi(Penguin Bookstore)
Edit : Ayumi Sakai

『かもめ食堂』のようにのんびりと心地よい、
「幸福度一位」の国の旅行エッセイ

『かもめ食堂』は、なぜだか心が疲れたときに観たくなる映画です。もう何度も観ているのに、ストーリーも知り尽くしているのに、やっぱり観てしまいます。ゆる~い登場人物たちのたたずまいが心地よく、自分を包み込んでくれる気がするのです。

この本は、俳優の片桐はいりさんが、『かもめ食堂』の撮影のために初めてフィンランドを訪れたときの思い出を綴ったエッセイです。映画と同じように、のんびりと心地よくて、ときどきふっと笑えて。元気がない人にも安心しておすすめできる一冊です。

印象的だったのは、フィンランドの撮影現場の雰囲気に表れる、日本との違いです。日本の撮影では、「みんな、苦虫を嚙み潰したみたいな顔で」働いていて、「身分の低いものはとにかくこてんぱんに怒鳴られる」のだそう。

でもフィンランドの現場では、たとえば撮影中にうっかり携帯電話を鳴らしたら、全員にビールをおごるならわしがあり、そんなときはみんな大喜び。

「すべてがこんな調子なのだ。誰もそれに対して、怒鳴ったり叫んだりする人はいなかった。」とあります。さすが、国民の幸福度世界一の国。

ところで『かもめ食堂』では、主人公のサチエ(小林聡美さん)とミドリ(片桐さん)が出会うのは、本屋の中でした。片桐さんはこう書いています。「シナリオをはじめて読んだ時、ちょっと驚いたのだ。わたしも、何をしていいかわからないと本屋に入る種類の女だからだ。特に本好きでも読書家でもないけれど、世界のどこに行っても、なぜか行き場所に困ると本屋に入る。」私も、私も、と嬉しくなりました。

そもそもミドリがフィンランドにやってきたのは、世界地図を開いて目をつぶって指さしたところが、フィンランドだったから。そのくらいの軽やかさで旅ができたらいいなぁ~。

これまでお読みいただきありがとうございました。この連載はこれで一旦最終回となります。

最後にひとこと。何をしていいかわからないとき、行き場所に困ったときは、ぜひ本屋に入ってみてくださいね!

『わたしのマトカ』
片桐はいり・著/幻冬舎文庫
旅好きな俳優・片桐はいりが
書き下ろした、一冊目のエッセイ集。
2005年の夏、映画の撮影のためにフィンランドに滞在した
1カ月のできごとを綴っている。
予備知識も何もなく「出張」の延長で歩いた土地で経験した、
人情味あふれるエピソードが満載の一冊。
06年3月の単行本刊行からじわじわと売れ続け、
累計で29刷12万部以上(2025年11月現在)。
「マトカ」とは、フィンランド語で「旅」のこと。

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