シンプルで上質、心豊かな暮らしが人気を集めるエッセイストの広瀬さん。
自分の軸を持ち、凛とした佇まいが素敵ですが、
時には落ち込んだり生きづらさを感じることもあるのだそう。
「心が回復しやすいよう、住まいを整えておく」という広瀬さんに、
具体的にどのように自分の心を守っているのかを綴ってもらいました。
全6回の連載でお届けします。
Edit : Ayumi Sakai
ノイズを少なくし、情報を制限。体とこころをリセットできる場所に
いまの住まいに暮らしはじめ、2年の月日が流れました。窓からは、高層ビルと建ち並ぶ倉庫。川にかかる大きな橋。意外に思われるかもしれませんが、この場所、この住まいを選んだのは「ノイズが少ない」と感じたからです。高層ビルも倉庫も余計な装飾がありません。窓から見える橋も素っ気ないもの。人によっては、殺風景に感じるこの景色が、わたしにとっては「ノイズが少ない」と映るのです。
ノイズが少ない。それは、自分を守るひとつの要素です。
外にでれば、広告や音楽、人の声が降り注ぎます。すれ違う人の動きを察しながら歩く町。混み合う交通機関。特に近年は、海外からの観光の方たちでどこも混んでいます。だから、自分の住まいは、ノイズを少なくし、情報を制限し、体とこころをリセットできる場所にしたいと思っています。
住まいは、生活する場であり、同時に自分のこころと体を休め労わる場所でもあります。帰宅すれば、静かで、あたたかな空間がある。そこでは気兼ねなく過ごすことができ、自分本来のやさしさや強さを思い出すことができる。深く眠り、回復することもできる。それは、明日への希望を育んでくれます。
弱ったり、孤独を感じた時の自分に合わせた住まい
以前、ある本を読んだ時「住まいの理想は、そこにいる一番弱い人に合わせたもの」という言葉を目にしました。人は、元気な時ばかりではありません。体調がよくない、こころが弱っている、孤独を感じる。そんなことは人生のなかで幾度も訪れます。そう。一番弱い人は、誰かのことではなく、自分自身 でもあるのです。
時々、必要を感じ出かけていく場所があります。そこは、清々しい空気が流れています。都市であれば、遠くまで広がる空が望める所。郊外なら、木々と水がある土地。共通しているのは、気持ちがおだやかになり、身体がゆるみ、呼吸が深くなり、やがて、五感がひらいていくことでしょうか。そこに身を置き過ごすことで、自分への、明日への、ささやかな希望が湧いてきます。
「生きることが快くなること」は出かけなくても叶えられる
自分の住まいでもそれは叶えられます。たとえ、そこに、豊かな森や澄んだ水がなくても。
部屋のなかの色を絞り、デザインや照明を抑え、過剰に物を置かない。そうするだけで、ノイズは少なくなります。人により、ノイズの定義は違いますが、わたしはそう感じます。身体に適した室温湿度、 澱んでいない空気、気持ちよく過ごせる音、香り、ひかりもあれば。
わたしたちは生きています。生きることが快よくなることが、自分にできる「自分を守る」こと。現在進行形の世界のなかで、健やかに、かろやかに、と願います。
「春」という文字と気温の乖離があるこの時期は、引きつづき体の冷えに気をつけるようにしています。
入浴剤を使うと温まり方がちがいます。
生薬を使用した市販の入浴剤を基本に好みの香りや自然塩を加え、
オリジナル入浴剤を作り利用しています。
入浴剤を入れるとあたたかさが長つづきしますね。眠りも深くなります。