つい浪費して後悔したり、収入や貯蓄が思うように増えなかったり、
老後に備える自信がなかったり。お金に関する不安の声がそこかしこから聞こえてきます。
いったい人はどのくらいお金があれば満足するのでしょう。
また、どうすれば安心して幸せに暮らせるのでしょうか。
元外資系金融エリートで「ニューレディ」としても活躍中の経済愛好家・肉乃小路ニクヨさんに、
お金の不安への対処法や、お金と上手につき合うためのヒントを聞きました。
お金の不安が生じるのは
「どう生きたいか」が曖昧だから
「お金の不安って、単にお金が足りないからだけじゃないんです。『自分がどう生きていきたいのか』が定まっていないことも、不安を生む原因じゃないかしら」。やわらかな口調で語り出すニクヨさん。
「人生のプランがぼんやりしていると、自分はいくら必要なのかがわからないんですよね。だからどれだけお金があれば安心かも見えない。その結果、漠然とした不安だけが膨らんでしまうんです」
確かにお金の悩みは数字の問題に見えて、実は「生き方」や「将来の自分」が見えないことからくるのかもしれません。
「だから一度、自分がどんな人生を送りたいのかを見つめ直して欲しいんです。例えば結婚や出産、子育て、転職、老後など、何歳で何をしてどんな暮らしがしたいのか、ライフプランを書き出してみる。生き方は人それぞれで、思い通りにいかないこともあるけれど、予想できるライフイベントにはいくら必要でどんなリスクがあるかを考えておけば、それに備えることができますよね」
最初は「毎月このくらいの金額で暮らせそう」とか「老後はこんなふうに過ごしたい」とか、ざっくりでOK。そこからイメージを膨らませ、情報を集めることで、必要な金額やするべきことが明確になっていきます。
「ライフプランを考える時は、やりたいことや必要な金額だけに目がいきがちだけど、自分の健康を損なうことや、パートナーを失うことだってあるかもしれない。そういった『もしものこと』も想定してリスクに備えていけば、不安は小さくなるんじゃないかしら」

不安に振り回されない人になる
「一人旅」のすすめ
お金の不安と向き合うことは、自分の未来と向き合うこと。今後の人生をどう生きるのか、どう備えるのかを考え始めると、決めたり選んだりすることが次々出てきます。
「その時に必要なのは、判断力と自己決定力」とニクヨさん。
「それらを培うのに最適なのが一人旅です。宿泊先や交通手段、どこへ行くか、どこで食べるか、誰と会うかなど、全部自分で判断して決めないといけないでしょう? だからぜひ旅をして欲しい。できれば海外への一人旅を。危険度が上がる分、どうすれば安全に楽しく旅行できるかを常に考えるようになるんです。それって人生と同じで、楽しく安全に過ごせたら最高じゃないですか」
一人で旅する勇気がなかったり金銭面でためらう方には、「判断力と自己決定力を高めるための研修、フィールドワーク(現地での実態に即した調査や研究)だと考えてみて」とアドバイス。
「旅先で居酒屋に行ってみようかな、でも一人では心もとない。テイクアウトなら安上がりだし……と迷っても、『これは行動力を高める練習』とか『コミュニケーション研修よ』と思えば、お店に入って隣りのお客さんや店員さんに話しかけたりできるはず。練習なんだから失敗しても大丈夫。そんなふうにゲームっぽく楽しみながら経験を積み重ねることで、日常生活や人生でも良い選択や判断ができるようになっていきます」

自分の得意な方法を見つけて
お金を貯めるのが近道
将来のプランやリスクに備え、お金の不安を減らすためには、ある程度の「蓄え」が必要になります。お金を貯めるためにはどうしたらいいのでしょうか?
「収入から支出を引いて黒字になれば、お金は貯まります。すごくシンプル」
ニクヨさんはほほ笑んで言いますが、それを実践するのがなかなか難しかったりします。
「世の中は誘惑が多いですものね。お金を貯める方法って、入ってくるお金を増やすか、支出を抑えるかしかなくて、収入を増やすのが得意な人もいれば、支出を減らすのが上手な人もいます。私は節約より入ってくるお金を大きくする方が楽しかったので、出費はほどほどに気をつけつつ、収入アップにフォーカスしました」
つまり、あれもこれも頑張るより自分に合った方法を見つけるのが近道、ということ。
「全部やろうとするから疲れるし、挫折しがちです。ただ、収入を増やしても支出が膨らみ過ぎたらアウト。会社だって経費がかさめば立ち行かなくなります。自分の経済状況をきちんと把握して、いくら使うか、身の丈に合った金額を設定することが大事ですよ」

お金を増やし自由な人生を手にいれる極意を語り反響を呼んだ『価値あるお金の増やし方』、
物価上昇中の日本でポジティブなマネープランを提案した
『いま必要なお金のお作法』(2冊共に、KADOKAWA刊)。
具体的なお金の貯め方や支出の抑え方、投資術はニクヨさんの2冊の著書で詳しく読める。
やりながら考えて、経験を増やし、
「わからない」から生まれる不安を減らす
「あれこれ考えすぎず、とにかく『やってみる』ことが大事。なぜかと言えば、やってしまえば経験になるから」と、ニクヨさんは背中を押します。
「失敗してもそこから学ぶことができるし、次に生かせるなら、それはそれで儲けものですよね。だから『やりながら考えよう』と楽観的に始める方がいいと思います。慎重派の方は小さなチャレンジから始めると実行しやすいかも。それを続けていくと判断力や自己決定力が培われますし、いつの間にか大きなチャレンジをしていたりするんですよね」
不安は「わからない」から生まれるもの。これからの生き方、それをかなえるために必要なお金、自分に合った貯蓄法など、何か1つ「わからない」をなくすことから始めてみませんか。
続くvol.2では、ニクヨさん流・幸せになるためのお金の使い方についてお届けします。

「若かりし頃のブーニン(モスクワ生まれの著名なピアニスト)の演奏が特に好きで、
プレイリストに入っています。この曲を聴くと背筋がピンと伸びる感じがして、
物事を一人で決断する時に聴いたりします」
Have a try !
小さな一歩が新しい自分をつくります。