薬膳の世界では季節を5つに分け、
それぞれに対応する臓器があると考えますが、
秋は「肺(はい)」の季節。
肺は呼吸によって全身に「気」を巡らせる役割を持ち、
「悲しみ」や「憂い」といった感情と関係しています。
秋になると、もの悲しくセンチメンタルな気分になるのは
乾燥で肺に負担がかかっているのも原因のひとつです。
また、悲しみの感情に振り回されることも、 肺を弱らせる原因になったりします。
「理由もなく、何だか悲しい」と感じたときは、
お疲れ気味な肺を労わる料理を作りましょう。
肺にいいのは「白い食材」と言われていて、
れんこんもそんな素材ひとつです。
湯気がやさしくふんわり立ち昇る蒸し料理で、
心も体もホッとさせましょう。
Styling : Yuko Hama
Text : Noriko Tanaka
Edit : Ayumi Sakai
Key 食材 れんこん
切り方や調理法によって、さまざまな食感や味わいが楽しめるれんこん。輪切りにするとシャキシャキしますが、縦に包丁を入れるとホクホク、しっとりした食感が楽しめます。糸を引くような粘り気は水溶性食物繊維のムチンで、たんぱく質の吸収を高めるとともに、胃の粘膜を保護してくれます。
RECIPE
理由のない悲しみに効く
「れんこんと豚肉の養生蒸し」
薬膳の世界でれんこんは咳や痰に効くと言われ、空気が乾燥する秋にとくにおすすめの食材のひとつ。秋から冬にかけてが旬で、甘味やうま味がぐんと増しています。 元気がないときに、豚肉は頼れる食材です。生命力を高め、血を補い、体に潤いを与えてくれます。ビタミンB1が豊富で、疲労を素早く回復してくれます。豚肉に発酵調味料である塩麹をまぶすことで、たんぱく質が分解されて消化吸収しやすくなり、食感もやわらかに。
蒸すうちに昆布の塩気とうま味、豚肉のコクがれんこんに移って、特に味付けをしなくても、満足いく味わいになりますよ。
材料(2人分)
れんこん … 300g
豚肩ロース肉(焼き肉用)… 150g
小ねぎ … 1本
昆布(20×15㎝ほど)… 1枚
酒 … 大さじ1
A
しょうが(すりおろし)… 1片分
塩麹 … 大さじ1~1と1/2
- れんこんは皮ごと縦に包丁を入れ、食べやすい大きさに切る。小ねぎは斜め切りにして、水にさらす。
- ボウルに豚肉を入れ、Aを加えてもみ、なじませる。
- ペーパータオルに酒をしみ込ませ、昆布の表面全体を拭く。
- 耐熱皿に3を敷き、れんこん、2をのせる。フライパンの底に安定用にペーパータオルを敷き、その上に耐熱皿をのせ、皿にかからない深さまで水を注ぎ、ふたをする。
- 4を中火にかけ、れんこんと肉に火が通るまで10分ほど蒸す。
- 昆布ごと器に盛り、水気をきった小ねぎをのせる。好みで五香粉適量(分量外)をふってもよい。
れんこんは縦に切ると
輪切りにしたものにくらべ
ほっくりとした食感に。
水にさらすことで変色を防ぎます。